2020年春闘について

2020年春闘に関するJMITU支部の見解を述べます。

昇給率が2.0%であったことは、極めて遺憾です。

一方で、下記のような前進面もありました。

1. パートタイマと再雇用社員の基本給・一時金の改善要求に対する会社回答の

   変化

2019年秋季闘争での回答

2020年春闘での回答

①パートタイマと再雇用社員の一時金支給月数を、正社員と同一とすること。

(現在の支給月数は、パートタイマが55%、再雇用社員が60%)

現在は考えておりません。

現在は考えておりません。

パートタイマと再雇用社員の労働条件や生産性、再雇用社員については年金支給額を含めたトータルの収入状況等を総合的に鑑みれば、当該待遇差は現時点では合理的であると解しています。

パートタイマと再雇用社員の労働条件や、労働者によっては勤労意欲や就労能力の低下がみられる現状、また、再雇用社員については年金支給額を含めたトータルの収入状況等を総合的に鑑みれば、当該待遇差は現時点では合理的であると解しています。

なお、この点についての雇用状況や社会情勢等を踏まえた議論は継続すべきとの認識です。

なお、この点についての雇用状況や年金支給開始年齢を含めた社会情勢等を踏まえた待遇改善に関する議論は継続すべきとの認識です。

②再雇用社員の基本給を、直ちに退職時の70%(ただし時給換算で1500円を下回らない)とすること。その後80%以上にすること。

(現在の再雇用社員の基本給は、定年退職時の55~60%)

一昨年の春闘にて55%~60%に引き上げており、さらに引き上げることは、現在は考えておりません。

一昨年の春闘にて55%~60%に引き上げており、さらに引き上げることは、現在は考えておりません。

再雇用社員の労働条件や生産性、年金支給額を含めたトータルの収入状況等を総合的に鑑みれば、当該待遇差は現時点では合理的であると解しています。

再雇用社員の労働条件や、労働者によっては勤労意欲や就労能力の低下がみられる現状、年金支給額を含めたトータルの収入状況等を総合的に鑑みれば、当該待遇差は現時点では合理的であると解しています。

なお、この点についての雇用状況や社会情勢等を踏まえた議論は継続すべきとの認識です。

なお、この点についての雇用状況や年金支給開始年齢を含めた社会情勢等を踏まえた待遇改善に関する議論は継続すべきとの認識です。

 

【解説】

昨年の秋闘回答に対して、JMITU支部は、既に昨年の秋季年末闘争の団交で以下の2点を指摘していました。

①正社員と、パートタイマや再雇用社員の待遇差は、主観的又は抽象的な説明では足りず、

 「客観的及び具体的な実態に照らして、不合理と認められるものであってはならない」と

 定められました(厚生労働省のガイドライン)。したがって、正社員と、パートタイマや

 再雇用社員の生産性を、客観的及び具体的に測定し比較した実態(データ)の開示を会社

 に求めます。

②まさに「年金支給額を含めたトータルの収入状況」は大きな問題です。今年度中に定年退

 職で再雇用となる男性従業員は64歳まで、女性従業員は61歳まで無年金となりまし

 た。そして、2021年4月2日以降に定年退職を迎える男性は65歳まで無年金になり

 ます。さらに、2026年4月2日以降は女性従業員も65歳まで無年金になります。 3

 年前の春闘で、再雇用社員の基本給の底上げ(定年退職時の50%→55%)が実現した

 背景は、「再雇用社員の労働条件は、年金の一部(報酬比例部分)が60歳から支給され

 ることを前提に会社が決めた。その前提条件が崩れた(2年ごとに支給年齢が1歳ずつ先

 送りになる)ので見直す必要がある」ということでした。まもなく年金支給額は65歳ま

 でゼロになろうとしています。それに対応した基本給の見直しが必要です。

今春闘では、以下の変化がありました。上記のJMITU支部の指摘を会社が受け止めた

結果だと考えます。

①回答から「生産性」を削除し、「労働者によっては勤労意欲や就労能力の低下がみら

 れる現状」に変更しました。 この変更からは次のことが読み取れると考えます。

 会社は、パートタイマや再雇用社員の「不合理な待遇差の解消」は実施せざるを得ないと

 考えているが、一律に実施することには強い抵抗感を持っていると思われます。

 実態に即した合理的な「待遇差の解消」の実現に向けて、JMITU支部は会社との協

 議を継続します。

②回答が「年金支給開始年齢を含めた社会情勢等を踏まえた待遇改善に関する議論は継続

 すべき」と変化しました。 男性従業員が65歳まで無年金となるタイミングと、「パー

 トタイム・有期雇用労働法」と「同一労働同一賃金ガイドライン」が中小企業にも適用

 され「不合理な待遇差」を解消する法的義務を負うタイミングは、同じ2021年4月

 1日です。JMITU支部は、遅くともそれまでに納得できる合意を目指します。

2. ハラスメントをなくす要求について

【要求】

 2019年秋季闘争で、『来年度4月改定に加える方向で、検討を進めます。但し、「す

 べてのハラスメント」となると、就業規則の懲戒自由の規定としては範囲が広すぎ、労働

 者に不測の損害を与えかねないことから、ハラスメントとして広く認識され、ある程度公

 的な定義がなされている、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハ

 ラスメントに限定する考えです。』との回答を得ました。今年4月の修業規則の改定内容

 を具体的に開示し、協議することを求めます。

【回答

 現在就業規則については全面的な見直しを実施していますが、現時点では改定案が完成し

 ていません。今後、4月改定予定の就業規則の内容を貴組合に事前に開示し、意見を聞く

 考えです。

 

3. 大卒初任給の引き上げに伴う賃金是正要求について

【要求】

 ①正社員と契約社員 「一律1万円+賃金是正2000円」+「現在の賃金体系で4%」の

  賃上げを実施すること。

 ②パートタイマ 時給で「一律50円+賃金是正10円」+「一律4%」の賃上げを実施す

  ること。 

 ③継続再雇用社員 「賃金是正2000円」+「一律4%」の賃上げを実施すること。

【回答】

 今期採用より大卒初任給を208,000円から210,000円としたことに伴う賃金

 是正の要否については、会社としても注視して参りますが、現時点では是正の必要はない

 と判断しております。また、今後会社が是正の必要性を認識し、是正を実行するに際し、

 当該是正割合が昇給総額の2パーセントを超える場合には、事前に貴組合に通知し、貴組

 合の要望があれば、当該是正割合について協議します。 

【解説】

 従来からの労使合意により、昇給総額の2%を是正原資としてきました。今回の回答は、

 今後実際に昇給を実施した結果、昇給総額の2%を超える是正が必要と会社が判断した場

 合、JMITU支部と事前に協議するというものです。その際、2%を超える是正原資

 は、「会社の持ち出し」であることを団交で確認しました。